ELECTRICITY
BUSINESS
その最前線でビジネスモデルを構築する
MISIパーソン・2人が語る
「鉄」の新しいフィールドとは?
PROJECT MEMBERS
NARUYA MURANAKA
村中 就矢
鋼材第一本部 建材事業室長
世界地図に残る規模のインフラプロジェクトに携われることに憧れ、2003年にMISIに入社。鋼管本部でパイプライン・プラント用配管を取り扱い、その経験を基に2019年から新たなフィールドである洋上風力に臨む。
IPPO OH
王 一波
鋼材第一本部 建材事業室
洋上風力ビジネスの将来性を感じ、地図に残る巨大洋上風力プロジェクトに参画したく、2019年にMISIへ転職。前職では外資系風車メーカーのグローバル調達業務を担当。これまで風力分野の業務経験を活かし、日本洋上風力基礎部材の供給可能性を追求していく。
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EPISODE #01
舞台は、いよいよ洋上へ!
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村中
いま私たち人類が直面している喫緊の問題と言えば、地球温暖化ですね。その原因ともされる温室効果ガス削減に向けた再生可能エネルギーへの転換は、世界各国真剣に取り組むべき課題となっています。
王日本でも2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする方針を掲げ、より温室効果ガス削減に向けた再生可能エネルギーへの転換が推進されるとされています。これに大きく貢献するのが“洋上”風力発電なのです。
村中風力発電と聞くと、風況の良好な高台に立つ陸上風力発電をイメージすることが多いと思いますが、実は、適地が限定的な陸上に比べ、洋上ははるかに大きなポテンシャルを秘めています。
王風力発電は、陸上、洋上ともにデンマークが発祥の地です。1991年に世界初の洋上ウインドファームであるVindeby洋上風力発電所が建設され、以降、ヨーロッパの風力発電の舞台は、陸上から洋上へ移行してきました。それは陸上での立地スペースの問題に加え、ヨーロッパの海が遠浅で設置しやすいことも大きかったと思います。2012年には5,000 MWだった洋上風力発電の導入量が、2017年には15,780MWと約3倍に増えるなど、ヨーロッパの洋上風力発電は急速に拡大しています。
村中かたや日本の現状は、一般海域の使用に関する法律の整備や、漁業関係者との利害調整など独自の問題を抱えており、なかなか風力発電の導入が進みませんでしたが、2019年4月に洋上風力発電普及法(※)が施行され、2020年に経済産業省資源エネルギー庁及び国土交通省港湾局は国内の5海域を促進区域に指定、公募を開始しました。促進区域では民間事業者に最長30年の操業が許可されることになります。2020年12月に政府は2040年までに3000万―4500万キロワットとする目標を定めました。
王技術面から言うと、風力発電には、水深が浅いところに基礎部分となる海洋構造物を設置して固定する着床式と海洋構造物を船のように洋上に浮かべ、ワイヤーで固定する浮体式がありますが、今後日本ではまずヨーロッパにおいて実用化されている着床式の洋上風力発電から広がっていくと想定されます。日本近海での実証実験もかなり前から行われており、実はMISIはその実験において基礎部分の海洋構造物の鋼材の供給や製品加工などを担ってきました。MISIとしては機能を発揮する環境が整ってきたと受け止めています。
洋上風力向け、風車を支える基礎部材
※ 正式な法律名は「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」
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EPISODE #02
パートナー選びは、鉄鋼ビジネスの高い経験値から
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村中
日本が着実な歩みを見せる一方、お隣の中国では政府が国をあげて洋上風力発電を強力に推進しており、技術的にもかなり先行しています。現在、江蘇省や広東省を中心に原発10基分の発電量に相当する、10ギガワット規模の着床式風力発電が既に操業を開始あるいは建設中で、ほぼすべての部品を国内で調達できるまでにサプライチェーンが整ってきました。これまでの重工業のような「中国=後発」という図式は洋上風力発電に関しては全く当てはまらず、技術革新、設備導入、実績、いずれをとっても日本よりはるかに先行しています。中国はまさに「世界の工場」ですので、造船や巨大構造物を同時に、しかも複数作ることができる企業が既に揃っています。
王ええ、報道では欧州のニュースが目立っていますが、洋上風力発電における中国の実力は無視できないレベルにあります。例えば、着床式風力発電の基礎部分には、1本の大きな杭が海底に打設されるタイプのものがありますが、日本にはこの杭を製造できるメーカーがいない状況です。サプライチェーンがそろっていないことのみならず港湾や資材置き場などが整備されていないため、中国の背中はまだ遠い状態です。そこMISIでは、日本の洋上風力発電の本格導入に向け、これまで共に風力関連設備、具体的には風車のタワーや作業船関連の供給を積み重ねてきた中国パートナーと洋上風力基礎製品を日本の顧客に供給する新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいます。浮体式洋上実証実験でもタッグを組んだその中国パートナーは、品質・加工技術・納期対応ともに高く評価されており、経験も豊富です。鉄の加工に関してあらゆる対応が可能です。
村中洋上風力発電施工用作業船である半潜水型スパッド台船の建造実績もあるため、風力発電の基礎部分だけでなく、幅の広い提案を行うことができるという優位性も持っております。
王すでに私たちは日本の洋上風力発電本格導入を見据えて動き始めています。既存取引先との検討はもちろん、新たに参入する電力会社やゼネコン、エンジニアリング会社、鉄鋼メーカーなどを中国の加工拠点にお連れして実際のパフォーマンスを見ていただく取り組みも積極的に行っています。他社に比べて早く取り組んできたことによるアドバンテージがありますし、鉄鋼ビジネスで培った経験値をもとに数ある中国企業の中からベストパートナーを選んでいるという自負もあります。MISIが紹介・契約当事者となることで積極的に検討を進めてくれる取引先も数多くいらっしゃいます。
風力発電導入量の推移(発電容量)※
※ 出所:NEDOデータベスより2017年3月末までの単機出力10kW以上かつ総出力20kW以上の風車で稼働中のものを集計。
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EPISODE #03
だからこそ、MISIのフィールドは成長する!
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村中
MISIは鉄鋼商社ですから、もちろん「鉄」のトレーディングで利益を出すのが伝統的な商売です。ただ、鉄鋼ビジネスを単なる「鉄」の売り買いに留めることでは粗鋼生産量が減少していく傾向の中今後の発展性はありません。MISIが行ってきた従来型のビジネスモデルは、次代のビジネスフィールドを創出する全方位探知アンテナであり強力な武器でもあるのです。「鉄」自体は時代が変わっても決してなくなることのない素材ですが、その「鉄」を取り巻く環境は常に成長しています。その成長の瞬間を掴み取れば、従来の事業範囲から新しい一歩を踏み出しMISIは他の鉄鋼商社とは異次元のステージで、新しいビジネスモデルを展開できるのではないかと思います。
王洋上風力発電自体が新しいビジネスですので、「鉄」の供給から基礎製品加工、最終的なサービスの提供までワンストップで提供できるビジネスに広げていきたいですね。この業界に詳しい人材は日本にはまだ多くないので、私自身はMISIにおいて日本の洋上風力発電の発展に貢献していきたいです。
村中将来的には「日本の洋上風力発電には必ずMISIが絡んでいる」と言われたいですし、「あの風車プロジェクトにはお父さんも関わったんだよ」と語りたいですね。もっとも基礎部分は海中に沈んでいてほとんど見えないのですが(笑)。
王基礎は地味ですが、全体を支えているところですから(笑)。基礎がなければ成り立たない。
村中例えるなら日本の洋上風力発電はまだ夜明け前です。日本は海洋面積の広さや風況の良さから洋上風力のポテンシャルは非常に高いので、まずは洋上風力の基礎部製造のビジネス領域でリーディングカンパニーとなり、ゆくゆくは海外の洋上案件も狙いたいです。また、“洋上風力発電”のような「鉄」の進化形ビジネスフィールドはまだ至る所に潜んでいます。そんな第二、第三の“洋上風力発電”の発見もこれから先、MISIで働く楽しみの一つだと思っています。